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勝率60%の馬券なら、そんなに連敗しない。
勝率70%なら、3連敗したら何かがおかしい。
競馬を続けていると、こんな感覚を持つことがあります。
しかし、確率で考えると少し違います。
勝率60%でも普通に4連敗、5連敗は起こります。
そして、買う回数が増えれば増えるほど、一度は大きな連敗に遭遇する確率も上がります。
今回は、的中率20%から70%までについて、100回、1000回と馬券を買った場合に、どのくらいの連敗が起こり得るのかを計算します。
競馬データを見るとき、「最大連敗」という言葉は少し注意が必要です。
過去100回で最大6連敗だったとしても、次の100回でも6連敗までとは限りません。
過去データに6連敗しか存在しなかったとしても、それは単にその期間では7連敗以上が出なかっただけです。
将来7連敗、8連敗が起きないことを意味しません。
そこで今回は、単純な確率モデルを使います。
各レースの的中確率が一定で、それぞれの結果が独立していると仮定し、「ある連敗が期間中に一度以上発生する確率」を計算します。
現実の競馬ではレース条件やオッズ、馬場、人気構成などが変わるため、完全に独立・同一確率とは限りません。
ただし、資金管理の基準を考えるには非常に役立ちます。
まず、100回馬券を購入するケースです。
下表は、「その連敗が100回の中で一度以上起きる確率が50%以上となる最長の連敗数」を示しています。
| 的中率 | 不的中率 | 連敗数 | 100回以内に一度以上起きる確率 |
|---|---|---|---|
| 20% | 80% | 15連敗 | 約50.8% |
| 30% | 70% | 10連敗 | 約58.0% |
| 40% | 60% | 7連敗 | 約68.9% |
| 50% | 50% | 6連敗 | 約54.6% |
| 60% | 40% | 4連敗 | 約80.1% |
| 64.7% | 35.3% | 4連敗 | 約64.2% |
| 70% | 30% | 3連敗 | 約86.4% |
的中率60%というと、かなり勝てる印象があります。
しかし、100回買えば4連敗が一度以上起きる確率は約80%です。
つまり、4連敗したからといって、それだけで「ロジックが壊れた」と判断するのは早いということです。
むしろ、確率上はかなり普通に起こります。
的中率50%では、100回中に6連敗が発生する確率は約54.6%。
半分以上です。
勝率50%の戦略を100回使って6連敗したとしても、それだけでは異常とは言えません。
では、馬券購入回数を1000回に増やすとどうなるでしょうか。
| 的中率 | 不的中率 | 連敗数 | 1000回以内に一度以上起きる確率 |
|---|---|---|---|
| 20% | 80% | 25連敗 | 約53.0% |
| 30% | 70% | 17連敗 | 約50.2% |
| 40% | 60% | 12連敗 | 約58.2% |
| 50% | 50% | 9連敗 | 約62.4% |
| 60% | 40% | 7連敗 | 約62.7% |
| 64.7% | 35.3% | 6連敗 | 約71.5% |
| 70% | 30% | 5連敗 | 約81.9% |
的中率70%の場合、不的中率は30%です。
それでも1000回繰り返せば、5連敗が一度以上起こる確率は約81.9%あります。
かなり高い数字です。
勝率70%のロジックで5連敗したとしても、長期間運用しているのであれば十分起こり得ます。
サンプル数が増えること自体は重要です。
長期間検証すれば、本当の勝率や回収率に近づきやすくなります。
一方で、試行回数が増えるほど大きな連敗に遭遇する可能性も高まります。
つまり、長期運用では「平均値が安定する」ことと「最大連敗が伸びる」ことが同時に起こります。
サンプル数については、「回収率120%でも信用できない?競馬データでサンプル数・収束・再現性を見る方法」でも詳しく解説しています。
ここで、前回検証した1番人気の複勝を使って考えてみます。
2016〜2026年の公開集計では、1番人気の複勝率は64.7%でした。
詳しくは「1番人気の複勝を買い続けたら勝てる?的中率64.7%・回収率84%を検証」でまとめています。
複勝率64.7%を一定と仮定すると、100回購入した場合に4連敗が一度以上発生する確率は約64.2%です。
5連敗でも約29.5%あります。
つまり、「1番人気の複勝なのに4回も連続で外れた」という状況は、数字上そこまで異常ではありません。
1000回まで増やすと、6連敗が一度以上発生する確率は約71.5%です。
7連敗でも約35.7%。
かなり当たりやすい1番人気の複勝であっても、長期ではまとまった連敗を避けられません。
ここを知らずに運用すると、普通の連敗を「異常」と勘違いしてしまいます。
では、複勝率64.7%で10連敗したらどうでしょうか。
さすがに珍しくなります。
複勝率64.7%を一定と仮定すると、1000回以内に10連敗が一度以上起きる確率は約1.9%です。
かなり低い数字です。
しかし、ゼロではありません。
さらに試行回数を1万回まで増やすと、10連敗が一度以上起きる確率は約17.7%まで上がります。
同じ勝率でも、観測期間が長くなるほど極端な並びを見る可能性が高くなるからです。
バックテストの最大連敗を、そのまま将来の上限として使うのは危険です。
連敗の問題は、精神的につらいことだけではありません。
賭け金が大きすぎると、資金そのものが大きく削られます。
毎回、その時点の資金に対して一定割合を使い、すべて外れた場合を計算してみます。
| 1回の投資割合 | 6連敗後 | 10連敗後 | 15連敗後 |
|---|---|---|---|
| 1% | 約-5.9% | 約-9.6% | 約-14.0% |
| 2% | 約-11.4% | 約-18.3% | 約-26.1% |
| 3% | 約-16.7% | 約-26.3% | 約-36.7% |
| 5% | 約-26.5% | 約-40.1% | 約-53.7% |
※毎回その時点の残高に対して同じ割合を投資し、各賭け金を全額失ったと仮定した単純計算です。
1回あたり5%という数字は、一見するとそこまで大きく感じないかもしれません。
しかし、10連敗すると資金は約40.1%減ります。
15連敗なら約53.7%減。
半分以上です。
資金を50%失った場合、元に戻すには残った資金を100%増やす必要があります。
ドローダウンが大きくなるほど、回復は急激に難しくなります。
ここで、低オッズ複勝の問題ともつながります。
「複勝1.1倍なら90%以上当たりそうだから大きく賭けてもいい」
これは危険な考え方です。
複勝1.1倍の損益分岐的中率は約90.9%です。
つまり、高い的中率を維持して初めて成立する価格です。
そして、高勝率だからといって連敗がゼロになるわけではありません。
低オッズ複勝については、「複勝1.1倍は本当に安全?必要的中率90.9%と回収率の罠を検証」で詳しく検証しています。
高勝率だから安全。
だから大きく賭ける。
この二段論法にすると、一度の想定外の連敗で大きなドローダウンを受けます。
資金管理では、「普段どれくらい当たるか」だけでなく、「悪い並びが来たときに何連敗まで耐えられるか」を先に考える必要があります。
さらに重要なのが、期待値と破産リスクは別問題だということです。
仮に長期回収率105%の戦略があったとします。
最終的にはプラス期待値でも、途中で連敗が集中する可能性があります。
資金に対して賭け金が大きすぎれば、期待値が収束する前に資金がなくなることもあります。
つまり、「期待値があるから大丈夫」ではありません。
期待値の考え方については、「的中率80%でも負ける?競馬で勝率より期待値が重要な理由」も合わせて読むと分かりやすくなります。
馬券条件を検証するとき、成績表に「最大連敗6」と出ていると安心したくなります。
しかし、それだけでは不十分です。
100件のバックテストと1万件のバックテストでは、観測される最大連敗が違って当然です。
試行回数が少なければ、たまたま大きな連敗が出ていない可能性があります。
したがって、最大連敗を見るときは、少なくともサンプル数とセットで考える必要があります。
全期間では最大6連敗でも、ある年度だけ10連敗している可能性もあります。
逆に、一部年度だけ異常に好成績で、全体の数字を押し上げていることもあります。
だから私は、回収率だけでなく、年度別、サンプル数、ドローダウン、連敗、未知期間での成績まで確認したいと考えています。
さらに、条件を過去データへ合わせすぎていないかは、「回収率115.7%は本物?競馬データの過剰最適化とOOS検証」のようにOOSで確認する必要があります。
連敗すると、すぐ条件を変更したくなります。
しかし、その連敗が確率的に普通の範囲なら、そこでルールを変えることで逆に検証の一貫性を失います。
私なら、まず現在の連敗数が想定された確率分布の中でどの程度なのか、過去のサンプル数は十分か、直近だけでなく年度別成績が崩れていないか、オッズ構造や買い条件そのものが変化していないかを確認します。
つまり、連敗したという事実だけでは手法の良し悪しは判断できません。
今回の計算で分かるのは、勝率が高くても連敗は避けられないということです。
的中率60%でも、100回なら4連敗が約80.1%。
1000回なら7連敗が約62.7%。
前回扱った1番人気複勝の64.7%を使っても、1000回なら6連敗が約71.5%で発生します。
勝率70%ですら、1000回なら5連敗が約81.9%です。
したがって、資金管理を考えるときに見るべき数字は平均勝率だけではありません。
競馬では、当たり外れの順番を選べません。
良い条件を持っていても、悪い結果が連続して先に来ることがあります。
だから私は、回収率だけを見るのではなく、最大連敗とドローダウンまで含めて条件を評価します。