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競馬で「安全な買い方」と聞いて、多くの人が最初に思い浮かべるのが、1番人気の複勝ではないでしょうか。
もっとも支持されている馬を選び、しかも1着ではなく3着以内で的中。
確かに、当たりやすさだけを見ればかなり魅力的です。
では、1番人気の複勝を何も考えずに買い続けたら、資金は増えるのでしょうか。
2016〜2026年のJRA公開レース結果37,083レース、延べ517,114出走を集計したデータでは、1番人気の成績は次のようになっています。
かなり当たります。
しかし、回収率は100%を下回っています。
つまり、1番人気の複勝は「当たりやすい」のは事実でも、「買い続ければ儲かる」とは言えません。
まず、的中率から見てみましょう。
1番人気の複勝率は64.7%でした。
単純に考えれば、100回買えば約65回は的中する水準です。
これはかなり高い数字です。
複勝は、通常8頭以上のレースでは3着以内、7頭以下では2着以内に入れば的中します。
そのうえ、市場でもっとも支持されている1番人気を選ぶわけですから、的中率が高くなるのは自然です。
競馬では、何回当たったかではなく、最終的にいくら戻ってきたかが重要です。
1番人気の複勝回収率は84%。
100万円買えば、過去集計と同じ水準なら84万円しか戻らない計算です。
的中率64.7%という数字だけを見ると安全そうですが、価格まで含めると結果は変わります。
ここで、よりイメージしやすいように単純計算してみます。
仮に37,083レースすべてで、1番人気の複勝を100円ずつ買ったとします。
投資額は約370万8,300円です。
回収率84%として単純計算すると、払戻総額は、
となります。
したがって、差額は約59万3,000円のマイナスです。
※回収率84%は丸められた集計値のため、金額はあくまでイメージをつかむための概算です。
これが「的中率」と「回収率」の違いです。
的中率だけを見て馬券を評価すると、この差を見落としてしまいます。
では、1番人気を買うなら単勝より複勝の方が優れているのでしょうか。
同じ集計では、1番人気の単勝と複勝は次の結果でした。
| 買い方 | 的中率 | 回収率 |
|---|---|---|
| 1番人気・単勝 | 33.1% | 79% |
| 1番人気・複勝 | 64.7% | 84% |
的中率は、単勝33.1%に対して複勝64.7%。
ほぼ2倍です。
また、この集計では回収率も単勝79%に対して複勝84%でした。
したがって、この期間全体では複勝の方が損失率は小さかったことになります。
ただし、ここで「複勝の方が儲かる」と結論づけるのは早すぎます。
どちらも回収率100%を下回っているからです。
単勝と複勝の構造的な違いについては、「単勝と複勝どっちが儲かる?回収率・的中率・リスクをデータ比較」でも詳しく検証しています。
理由は単純です。
当たったときの払戻が小さいからです。
回収率84%、複勝率64.7%という集計値から、的中1回あたりの平均払戻相当を機械的に逆算してみます。
100円購入に対して、的中時の平均払戻相当は約129.8円です。
つまり、1回当たったときに増える利益は平均すると約29.8円相当。
一方で、外れれば100円を失います。
※これは複勝率64.7%と回収率84%から逆算した平均払戻相当であり、個々のレースの実際の複勝オッズ平均を示すものではありません。
約30円ずつ利益を積み上げても、1回外れれば100円を失います。
そのため、4回程度連続して的中して、ようやく1回の不的中を取り戻せる計算になります。
これが低オッズ馬券の特徴です。
勝つ回数は多い。
しかし、勝ったときの利益が小さいため、少数の不的中が積み上げを削ります。
では、複勝率64.7%なら、平均でどれくらいの払戻が必要なのでしょうか。
損益分岐点となる平均払戻倍率は、
です。
つまり、複勝率64.7%なら、平均して約1.55倍の払戻があってようやく収支トントンになります。
しかし、実際の集計から逆算した平均払戻相当は約1.30倍。
価格が足りていません。
これは、競馬を投資として見るうえで非常に重要な考え方です。
期待値の基本については、「的中率80%でも負ける?競馬で勝率より期待値が重要な理由」も参考になります。
ここで誤解しないようにしたいのは、1番人気そのものが悪いわけではないということです。
1番人気は、勝率33.1%、複勝率64.7%。
市場がもっとも高く評価した馬が、実際によく好走していることはデータから確認できます。
問題は、みんながそれを知っていることです。
強い馬には多くのお金が集まり、オッズは下がります。
つまり、能力が高いだけでは利益になりません。
その強さが、すでに価格へどこまで織り込まれているかを見る必要があります。
1番人気という情報は有用です。
しかし、1番人気だから買うというだけでは、過去集計では回収率100%を超えていません。
以前検証した「1番人気を買い続けたら勝てる?JRA過去5年の勝率・回収率を検証」でも、同じ問題が見えていました。
人気は強さの目安にはなります。
しかし、利益を生むには価格との組み合わせが必要です。
「それなら、1番人気の中でも複勝1.1倍だけを買えばいいのでは?」
こう考える人もいるでしょう。
しかし、低オッズになればなるほど、必要な的中率は高くなります。
1.1倍の損益分岐的中率は約90.9%です。
つまり、10回中9回当たるだけではまだ不足します。
この問題については、「複勝1.1倍は本当に安全?必要的中率90.9%と回収率の罠を検証」で詳しく計算しています。
つまり、低オッズはリスクがないのではなく、別の形で高い精度を要求しているのです。
ここからが、ウマデシで本当に検証したい部分です。
「1番人気の複勝を全部買う」と回収率84%。
だからといって、1番人気の複勝すべてに価値がないとは限りません。
たとえば、次のような条件に分解できます。
全体では84%でも、特定条件では100%を超える場所が存在する可能性はあります。
ただし、ここで注意しなければならないのが過剰最適化です。
競馬場、距離、馬場、頭数、オッズ、騎手などを大量に組み合わせれば、過去データ上だけ回収率120%や130%になる条件が見つかることがあります。
しかし、それが将来も続くとは限りません。
偶然だった可能性があるからです。
そのため、条件を見つけたら、年度別成績、サンプル数、条件を少しずらしたときの頑健性まで確認する必要があります。
サンプル数の考え方については、「回収率120%でも信用できない?競馬データでサンプル数・収束・再現性を見る方法」で詳しく解説しています。
仮に1番人気の複勝から回収率110%の条件を発見したとします。
そこで「必勝法発見」と判断してはいけません。
たとえば、2016〜2022年を使って条件を探したとします。
そこで見つけた条件を固定し、2023年以降のデータには一切手を加えず検証します。
これがOOS、つまり未知期間での検証です。
探索期間では110%だったのに、未知期間では78%になるなら、過去データに合わせすぎた可能性があります。
逆に、未知期間でも回収率が維持されるなら、初めて検討する価値が出てきます。
この考え方は、「回収率115.7%は本物?競馬データの過剰最適化とOOS検証」でも詳しく扱っています。
今回の数字をまとめます。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 対象集計 | 2016〜2026年 |
| JRAレース数 | 37,083レース |
| 1番人気・単勝勝率 | 33.1% |
| 1番人気・単勝回収率 | 79% |
| 1番人気・複勝率 | 64.7% |
| 1番人気・複勝回収率 | 84% |
1番人気の複勝は、約3回に2回当たります。
それでも、回収率は84%です。
つまり、競馬では「当たりやすさ」と「儲かりやすさ」は別物です。
1番人気は当たりやすい。
しかし、人気が集まるほど価格は下がります。
だから最後に見るべきなのは、人気順位ではありません。
確率と価格です。
馬ではなく、数字を見る。
そして、その数字が本当に将来も残るのかまで疑う。