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競馬初心者から、こんな質問をよく聞きます。
単勝は当たりにくい一方で、的中したときの配当は大きくなりやすい馬券です。
それに対して複勝は、単勝より当たりやすい代わりに、配当は低くなりやすくなります。
ここまでは、多くの人が知っていると思います。
しかし、私が気になるのはその先です。
そこで今回は、単勝と複勝を「的中率」だけではなく、
という投資的な視点から比較します。
結論から言えば、「複勝だから安全」「単勝だから儲かる」と単純には言えません。
最終的に重要になるのは、やはり「確率と価格」です。
最初に、2つの馬券の基本的な違いを整理しておきます。
単勝は、選んだ馬が1着になれば的中です。
仕組みは非常にシンプルです。
そのため、馬の勝つ確率と現在のオッズを比較しやすく、期待値を考えるうえでも分かりやすい馬券だと私は思っています。
一方、複勝は選んだ馬が所定の着順以内に入れば的中します。
通常のレースでは1〜3着が対象になるため、単勝より的中する可能性は高くなります。
ただし、「当たりやすい」ことと「儲かりやすい」ことは別問題です。
そこで次に、払戻率を確認します。
ここは意外と知られていません。
JRAが公表している通常の設定払戻率では、単勝と複勝はどちらも80%です。
| 券種 | 設定払戻率 |
|---|---|
| 単勝 | 80.0% |
| 複勝 | 80.0% |
| 馬連・枠連・ワイド | 77.5% |
| 馬単・3連複 | 75.0% |
| 3連単 | 72.5% |
つまり、払戻率だけで考えるなら、複勝の方が有利というわけではありません。
どちらも通常の設定払戻率は80%です。
では、何が違うのでしょうか。
大きな違いは、利益と損失の出方です。
単勝では、的中回数が少ない代わりに、1回の利益が大きくなりやすくなります。
対して複勝は、的中回数が増えやすい一方で、1回あたりの払戻は小さくなりがちです。
したがって、
と考えた方が分かりやすいでしょう。
では、実際の過去データではどうでしょうか。
2016〜2026年のJRA公式レース結果37,083レースを使った公開集計では、人気別の単勝回収率・複勝回収率が次のようになっています。
| 人気 | 勝率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
|---|---|---|---|---|
| 1番人気 | 33.1% | 64.7% | 79% | 84% |
| 2番人気 | 19.4% | 51.7% | 80% | 83% |
| 3番人気 | 13.1% | 41.6% | 79% | 80% |
| 4番人気 | 9.3% | 33.4% | 77% | 78% |
| 5番人気 | 7.1% | 26.5% | 79% | 76% |
| 6番人気 | 5.3% | 21.6% | 82% | 78% |
| 7番人気 | 3.8% | 16.5% | 79% | 75% |
| 8番人気 | 2.8% | 13.0% | 73% | 75% |
出典:GOLD競馬によるJRA公式レース結果の独自集計。2016〜2026年、37,083レース。
まず1番人気を見てみます。
この集計では、複勝の方が5ポイント高くなっています。
さらに、1番人気の複勝率は64.7%です。
そのため、「当たりやすさ」と「過去回収率」の両方を見ると、1番人気の複勝は比較的安定して見えます。
ここで注意したいのが、84%という数字です。
100%には届いていません。
したがって、
という結論にはなりません。
むしろ、「当たりやすいのに資金は少しずつ減っていく」という状態も起こり得ます。
一方で、6番人気を見ると結果は逆転します。
このケースでは、単勝の方が高くなっています。
つまり、
複勝だから回収率が高いわけではない。
ということです。
では、なぜ複勝は「安全」と言われやすいのでしょうか。
理由はシンプルです。
単勝より的中率が高いからです。
先ほどの公開集計では、1番人気の複勝率は64.7%でした。
勝率33.1%と比べると、かなり当たりやすくなります。
その結果、資金残高の上下も単勝より小さく感じやすくなります。
さらに、連続して外れる回数も比較的少なくなると考えられます。
ただし、ここで言う安全とは主に「結果のブレが小さく感じやすい」という意味です。
それが、そのまま利益につながるとは限りません。
したがって、「たくさん当たるから良い馬券」という判断だけでは不十分です。
期待値については、 的中率80%でも負ける?競馬で勝率より期待値が重要な理由 でも詳しく解説しています。
ここから、価格の話に進みます。
たとえば、複勝1.2倍の馬券があるとします。
単純化すると、損益分岐になる的中率は、
です。
つまり、複勝率80%と予想した馬でも、1.2倍なら単純計算では足りません。
さらに、複勝1.1倍ならどうでしょう。
損益分岐に必要な的中率は約90.9%です。
かなり高い水準になります。
つまり、「ほぼ来そう」という感覚だけで1.1倍を買うと、想像以上に厳しい勝負になる可能性があります。
たとえば、自分がある馬の複勝率を80%と予想したとします。
これはかなり高い確率です。
しかし、複勝オッズが1.1倍なら、
となります。
この仮定が正しいなら、当たりやすくても価格としては魅力的ではありません。
では、単勝なら良いのでしょうか。
もちろん、単勝にも明確な弱点があります。
それが連敗です。
たとえば、勝率10%程度の中穴馬を狙う戦略を考えます。
平均的には10回に1回程度の勝利です。
ただし、10回ごとに規則正しく1勝するわけではありません。
そのため、15連敗や20連敗のような期間も想定する必要があります。
仮にバックテスト上では単勝回収率110%だったとしても、途中で20連敗する戦略ならどうでしょう。
10連敗した時点で、「この方法はもう使えない」と止めてしまうかもしれません。
さらに、損失を取り返そうとして賭け金を増やせば、リスクは一気に高まります。
そのため、回収率を見る際には、
までセットで確認したいところです。
なお、サンプル数と回収率の関係については、 回収率120%でも信用できない?競馬データでサンプル数・収束・再現性を見る方法 でも詳しく説明しています。
ここまで読むと、「初心者は複勝だけ買えばいいのでは?」という疑問が出てきます。
しかし、私は券種だけでは決められないと思っています。
単勝でも、勝率に対してオッズが高ければ魅力があります。
逆に、複勝でも複勝率に対してオッズが低すぎれば魅力はありません。
つまり、
を考える方が重要です。
たとえば複勝でも、資金の半分を一度に賭ければ安全とは言えません。
一方で、単勝でも少額を一定ルールで繰り返すなら、1回の損失は限定できます。
したがって、本当のリスクは券種だけで決まるものではありません。
購入金額や勝率、オッズ、連敗数まで含めて考える必要があります。
ここで少し、投資の話に置き換えてみます。
NISAで投資信託を選ぶとき、「値動きが小さいから一番儲かる」とは考えません。
むしろ、リスクと期待リターンのバランスを考えます。
競馬にも似た部分があります。
複勝は的中率が高いため、単勝より資金曲線の上下を抑えやすい可能性があります。
一方で、低オッズばかりを買えば、大きな利益は期待しにくくなります。
逆に単勝では、当たりにくい代わりに一回の利益が大きくなりやすい。
ただし、これは構造を理解するための例えです。
NISAによる長期投資と競馬は、仕組みもリスクも別物です。
株式投資でも、良い資産だから何円でも買えばいいとは限りません。
同じように競馬でも、「この馬は強い」という情報だけでは足りません。
そこで必要になるのが、確率に対して現在の価格が妥当なのかという視点です。
競馬では、その価格がオッズです。
私は、単勝派か複勝派かという議論にはあまり興味がありません。
なぜなら、どちらにも期待値の高い馬券と低い馬券があり得るからです。
たとえば、
なら、単純化した期待値は1を超えます。
この仮定が妥当なら、単勝8倍でも価格として面白いという判断になります。
一方で、
なら、単純化した期待値は1を下回ります。
つまり、このケースでは当たりやすいのは複勝でも、価格面では魅力が低いことになります。
※数字は考え方を説明するための仮例です。実際の複勝払戻は確定まで幅があります。
競馬ロジックを検証するなら、私は単勝だけ、あるいは複勝だけを見るのではなく、両方を記録したいと思っています。
たとえば、ある条件について、
だったとします。
この場合、少数の勝ち馬が利益の多くを作っている可能性があります。
そのため、最大連敗や高配当への依存度も確認したくなります。
逆に、
なら、勝ち切れなくても馬券圏内に安定して来る条件かもしれません。
このように、単勝と複勝を両方見ることで、好走パターンをより立体的に捉えられます。
ここまでの内容を整理します。
① 単勝と複勝の通常設定払戻率はどちらも80%
② 一般に複勝の方が的中率は高い
③ しかし、的中率が高いことと期待値が高いことは別
④ 人気順位によって単勝・複勝の過去回収率は異なる
⑤ 単勝は連敗とドローダウンが大きくなりやすい
⑥ 複勝でもオッズが低すぎれば期待値は下がる
⑦ 最後に見るべきなのは「確率と価格」
だから私は、「初心者だから複勝」「儲けたいから単勝」という決め方はしません。
まず、その馬がどれくらいの確率で勝つ、あるいは馬券圏内に入るのかを考えます。
次に、現在のオッズを確認します。
そして最後に、その価格で買う価値があるのかを判断します。
この考え方は、単勝でも複勝でも変わりません。
強い馬を探すだけでは足りない。
当たりやすい馬を探すだけでも足りない。
「その確率なら、その価格は安いのか?」
そこまで考える。
これが「投資競馬研究所|ウマデシ」で大切にしている考え方です。
1番人気と回収率については、 1番人気を買い続けたら勝てる?JRA過去5年の勝率・回収率を検証 もあわせて読んでみてください。
また、バックテストの数字をどう評価するかは、 回収率115.7%は本物?競馬データの過剰最適化とOOS検証 で詳しく解説しています。
今回の記事から、さらに一つ疑問が出てきます。
確かに複勝は当たりやすい馬券です。
しかし、オッズが低すぎれば損益分岐に必要な的中率は急激に上がります。
そこで次回は、
を掘ります。
「ほぼ当たりそうだから買う」という判断が、本当に合理的なのか。
的中率・必要勝率・連敗・回収率という視点から検証していきます。
JRAの通常設定払戻率では、単勝・複勝とも80%です。
また、本記事の人気別成績には、2016〜2026年のJRA公式レース結果37,083レースを集計した公開データを参照しています。
ただし、公開集計は過去成績であり、将来の回収率を保証するものではありません。