競馬の単勝と複勝の回収率と的中率を比較

単勝と複勝、どっちが儲かる?払戻率は同じ80%なのに回収率が違う理由

競馬初心者から、こんな質問をよく聞きます。

単勝と複勝。
結局、どっちを買った方が儲かるの?

単勝は当たりにくい一方で、的中したときの配当は大きくなりやすい馬券です。

それに対して複勝は、単勝より当たりやすい代わりに、配当は低くなりやすくなります。

ここまでは、多くの人が知っていると思います。

しかし、私が気になるのはその先です。

「当たりやすいか?」ではなく、

長期でお金が残りやすいのはどちらなのか?

そこで今回は、単勝と複勝を「的中率」だけではなく、

  • 払戻率
  • 回収率
  • 人気別成績
  • 連敗リスク
  • 資金効率

という投資的な視点から比較します。

結論から言えば、「複勝だから安全」「単勝だから儲かる」と単純には言えません。

最終的に重要になるのは、やはり「確率と価格」です。

まず単勝と複勝の違いを確認する

最初に、2つの馬券の基本的な違いを整理しておきます。

単勝は「1着」を当てる馬券

単勝は、選んだ馬が1着になれば的中です。

仕組みは非常にシンプルです。

そのため、馬の勝つ確率と現在のオッズを比較しやすく、期待値を考えるうえでも分かりやすい馬券だと私は思っています。

複勝は「馬券圏内」を狙う

一方、複勝は選んだ馬が所定の着順以内に入れば的中します。

通常のレースでは1〜3着が対象になるため、単勝より的中する可能性は高くなります。

単勝 → 当たりにくい・配当は比較的大きい

複勝 → 当たりやすい・配当は比較的小さい

ただし、「当たりやすい」ことと「儲かりやすい」ことは別問題です。

そこで次に、払戻率を確認します。

実は単勝と複勝の設定払戻率は同じ

ここは意外と知られていません。

JRAが公表している通常の設定払戻率では、単勝と複勝はどちらも80%です。

券種 設定払戻率
単勝 80.0%
複勝 80.0%
馬連・枠連・ワイド 77.5%
馬単・3連複 75.0%
3連単 72.5%

「複勝だから制度的に有利」ではない

つまり、払戻率だけで考えるなら、複勝の方が有利というわけではありません。

どちらも通常の設定払戻率は80%です。

では、何が違うのでしょうか。

大きな違いは、利益と損失の出方です。

同じ80%でも資金曲線は変わる

単勝では、的中回数が少ない代わりに、1回の利益が大きくなりやすくなります。

対して複勝は、的中回数が増えやすい一方で、1回あたりの払戻は小さくなりがちです。

したがって、

同じ払戻率80%でも、

資金曲線の形はまったく違う

と考えた方が分かりやすいでしょう。

37,000レース超の公開集計ではどうだった?

では、実際の過去データではどうでしょうか。

2016〜2026年のJRA公式レース結果37,083レースを使った公開集計では、人気別の単勝回収率・複勝回収率が次のようになっています。

人気 勝率 複勝率 単勝回収率 複勝回収率
1番人気 33.1% 64.7% 79% 84%
2番人気 19.4% 51.7% 80% 83%
3番人気 13.1% 41.6% 79% 80%
4番人気 9.3% 33.4% 77% 78%
5番人気 7.1% 26.5% 79% 76%
6番人気 5.3% 21.6% 82% 78%
7番人気 3.8% 16.5% 79% 75%
8番人気 2.8% 13.0% 73% 75%

出典:GOLD競馬によるJRA公式レース結果の独自集計。2016〜2026年、37,083レース。

1番人気では複勝の回収率が高かった

まず1番人気を見てみます。

単勝回収率 79%

複勝回収率 84%

この集計では、複勝の方が5ポイント高くなっています。

さらに、1番人気の複勝率は64.7%です。

そのため、「当たりやすさ」と「過去回収率」の両方を見ると、1番人気の複勝は比較的安定して見えます。

ただし84%では利益は残らない

ここで注意したいのが、84%という数字です。

100%には届いていません。

したがって、

1番人気の複勝なら当たりやすい。

だから長期的にも儲かる。

という結論にはなりません。

むしろ、「当たりやすいのに資金は少しずつ減っていく」という状態も起こり得ます。

6番人気では単勝が上回った

一方で、6番人気を見ると結果は逆転します。

単勝回収率 82%

複勝回収率 78%

このケースでは、単勝の方が高くなっています。

つまり、

複勝だから回収率が高いわけではない。

ということです。

「複勝は安全」という言葉の正体

では、なぜ複勝は「安全」と言われやすいのでしょうか。

理由はシンプルです。

単勝より的中率が高いからです。

1番人気なら約3回に2回は馬券圏内

先ほどの公開集計では、1番人気の複勝率は64.7%でした。

勝率33.1%と比べると、かなり当たりやすくなります。

その結果、資金残高の上下も単勝より小さく感じやすくなります。

さらに、連続して外れる回数も比較的少なくなると考えられます。

「安心感」と「利益」は別

ただし、ここで言う安全とは主に「結果のブレが小さく感じやすい」という意味です。

それが、そのまま利益につながるとは限りません。

的中率が高い

≠

期待値が高い

したがって、「たくさん当たるから良い馬券」という判断だけでは不十分です。

期待値については、 的中率80%でも負ける?競馬で勝率より期待値が重要な理由 でも詳しく解説しています。

複勝1.2倍なら何%の的中率が必要?

ここから、価格の話に進みます。

たとえば、複勝1.2倍の馬券があるとします。

単純化すると、損益分岐になる的中率は、

約83.3%

です。

つまり、複勝率80%と予想した馬でも、1.2倍なら単純計算では足りません。

1.1倍なら約90.9%必要

さらに、複勝1.1倍ならどうでしょう。

損益分岐に必要な的中率は約90.9%です。

かなり高い水準になります。

つまり、「ほぼ来そう」という感覚だけで1.1倍を買うと、想像以上に厳しい勝負になる可能性があります。

高確率でも価格が悪ければ期待値は低い

たとえば、自分がある馬の複勝率を80%と予想したとします。

これはかなり高い確率です。

しかし、複勝オッズが1.1倍なら、

80% × 1.1倍

= 0.88

となります。

この仮定が正しいなら、当たりやすくても価格としては魅力的ではありません。

単勝の弱点は「連敗」

では、単勝なら良いのでしょうか。

もちろん、単勝にも明確な弱点があります。

それが連敗です。

勝率10%なら長い連敗も普通に起こる

たとえば、勝率10%程度の中穴馬を狙う戦略を考えます。

平均的には10回に1回程度の勝利です。

ただし、10回ごとに規則正しく1勝するわけではありません。

そのため、15連敗や20連敗のような期間も想定する必要があります。

単勝では特に、

ドローダウンに耐えられる資金管理

が重要になります。

回収率110%でも途中で耐えられるか

仮にバックテスト上では単勝回収率110%だったとしても、途中で20連敗する戦略ならどうでしょう。

10連敗した時点で、「この方法はもう使えない」と止めてしまうかもしれません。

さらに、損失を取り返そうとして賭け金を増やせば、リスクは一気に高まります。

そのため、回収率を見る際には、

  • 的中率
  • 最大連敗
  • 最大ドローダウン
  • サンプル数

までセットで確認したいところです。

なお、サンプル数と回収率の関係については、 回収率120%でも信用できない?競馬データでサンプル数・収束・再現性を見る方法 でも詳しく説明しています。

初心者なら複勝を買えばいい?

ここまで読むと、「初心者は複勝だけ買えばいいのでは?」という疑問が出てきます。

しかし、私は券種だけでは決められないと思っています。

重要なのは券種より「価格」

単勝でも、勝率に対してオッズが高ければ魅力があります。

逆に、複勝でも複勝率に対してオッズが低すぎれば魅力はありません。

つまり、

単勝か複勝かより、

「その確率を、その価格で買いたいか?」

を考える方が重要です。

券種だけで「安全」を決めない

たとえば複勝でも、資金の半分を一度に賭ければ安全とは言えません。

一方で、単勝でも少額を一定ルールで繰り返すなら、1回の損失は限定できます。

したがって、本当のリスクは券種だけで決まるものではありません。

購入金額や勝率、オッズ、連敗数まで含めて考える必要があります。

NISAで考えると分かりやすい

ここで少し、投資の話に置き換えてみます。

NISAで投資信託を選ぶとき、「値動きが小さいから一番儲かる」とは考えません。

むしろ、リスクと期待リターンのバランスを考えます。

競馬にも似た部分があります。

複勝は値動きの小さい商品に少し似ている

複勝は的中率が高いため、単勝より資金曲線の上下を抑えやすい可能性があります。

一方で、低オッズばかりを買えば、大きな利益は期待しにくくなります。

逆に単勝では、当たりにくい代わりに一回の利益が大きくなりやすい。

ただし、これは構造を理解するための例えです。

NISAによる長期投資と競馬は、仕組みもリスクも別物です。

S&P500でも「価格」を無視しない

株式投資でも、良い資産だから何円でも買えばいいとは限りません。

同じように競馬でも、「この馬は強い」という情報だけでは足りません。

そこで必要になるのが、確率に対して現在の価格が妥当なのかという視点です。

競馬では、その価格がオッズです。

「単勝派」「複勝派」と決める必要はない

私は、単勝派か複勝派かという議論にはあまり興味がありません。

なぜなら、どちらにも期待値の高い馬券と低い馬券があり得るからです。

単勝8倍でも買えるケース

たとえば、

単勝8倍
推定勝率15%

15% × 8倍 = 1.20

なら、単純化した期待値は1を超えます。

この仮定が妥当なら、単勝8倍でも価格として面白いという判断になります。

複勝1.3倍でも買えないケース

一方で、

複勝1.3倍
推定複勝率70%

70% × 1.3倍 = 0.91

なら、単純化した期待値は1を下回ります。

つまり、このケースでは当たりやすいのは複勝でも、価格面では魅力が低いことになります。

※数字は考え方を説明するための仮例です。実際の複勝払戻は確定まで幅があります。

データを見るなら「単複両方」を残す

競馬ロジックを検証するなら、私は単勝だけ、あるいは複勝だけを見るのではなく、両方を記録したいと思っています。

単勝回収率が高い条件

たとえば、ある条件について、

単勝回収率 125%
複勝回収率 74%

だったとします。

この場合、少数の勝ち馬が利益の多くを作っている可能性があります。

そのため、最大連敗や高配当への依存度も確認したくなります。

複勝回収率が高い条件

逆に、

単勝回収率 82%
複勝回収率 108%

なら、勝ち切れなくても馬券圏内に安定して来る条件かもしれません。

このように、単勝と複勝を両方見ることで、好走パターンをより立体的に捉えられます。

結論:複勝だから安全、単勝だから儲かるではない

ここまでの内容を整理します。

① 単勝と複勝の通常設定払戻率はどちらも80%

② 一般に複勝の方が的中率は高い

③ しかし、的中率が高いことと期待値が高いことは別

④ 人気順位によって単勝・複勝の過去回収率は異なる

⑤ 単勝は連敗とドローダウンが大きくなりやすい

⑥ 複勝でもオッズが低すぎれば期待値は下がる

⑦ 最後に見るべきなのは「確率と価格」

券種ではなく、一枚ごとの価値を見る

だから私は、「初心者だから複勝」「儲けたいから単勝」という決め方はしません。

まず、その馬がどれくらいの確率で勝つ、あるいは馬券圏内に入るのかを考えます。

次に、現在のオッズを確認します。

そして最後に、その価格で買う価値があるのかを判断します。

券種を選ぶ前に、

その馬券はいくらで売られているのかを見る。

この考え方は、単勝でも複勝でも変わりません。

強い馬を探すだけでは足りない。

当たりやすい馬を探すだけでも足りない。

「その確率なら、その価格は安いのか?」

そこまで考える。

これが「投資競馬研究所|ウマデシ」で大切にしている考え方です。

1番人気と回収率については、 1番人気を買い続けたら勝てる?JRA過去5年の勝率・回収率を検証 もあわせて読んでみてください。

また、バックテストの数字をどう評価するかは、 回収率115.7%は本物?競馬データの過剰最適化とOOS検証 で詳しく解説しています。

次は「複勝1.1〜1.5倍」を掘る

今回の記事から、さらに一つ疑問が出てきます。

確かに複勝は当たりやすい馬券です。

しかし、オッズが低すぎれば損益分岐に必要な的中率は急激に上がります。

低オッズ複勝の損益分岐

複勝1.1倍 → 必要的中率 約90.9%

複勝1.2倍 → 必要的中率 約83.3%

複勝1.3倍 → 必要的中率 約76.9%

複勝1.5倍 → 必要的中率 約66.7%

そこで次回は、

複勝1.1倍は本当に「安全」なのか?

を掘ります。

「ほぼ当たりそうだから買う」という判断が、本当に合理的なのか。

的中率・必要勝率・連敗・回収率という視点から検証していきます。

参考データ・注意事項

JRAの通常設定払戻率では、単勝・複勝とも80%です。

また、本記事の人気別成績には、2016〜2026年のJRA公式レース結果37,083レースを集計した公開データを参照しています。

ただし、公開集計は過去成績であり、将来の回収率を保証するものではありません。

本文中の一部数値は考え方を説明するための仮例を含みます。また、複勝オッズは確定まで変動し、払戻には幅があります。競馬は元本保証の投資ではありません。本記事はデータ分析と馬券構造の研究を目的としており、特定の馬券購入や利益を保証するものではありません。馬券は無理のない範囲で楽しみましょう。
投資競馬研究所|ウマデシ

AUTHOR

ウマデシ|投資競馬研究所

30代半ば、3児の父。 高校3年生のときに夢破れ、その後は何をやってもうまくいかず、 「俺はもう働かない」と決意。

それでも生きていくにはお金が必要だったことから、 株やFXをはじめとする投資の世界へ。 さまざまな経験を重ねる中で、 感覚や勢いではなく、 価格・確率・期待値・資金管理といった 数字を基準に判断する考え方に行き着く。

現在は、その視点を競馬にも応用。 人気や印だけに頼らず、 オッズ、回収率、期待値、母数、市場心理などから 競馬を研究している。

「馬ではなく、数字を見る」をテーマに、 投資競馬研究所|ウマデシを運営。

記事になる前の考察や検証データ、 NISA・S&P500・FXと競馬をつないだ発信は、 Xでも更新している。

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