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競馬で最も多くの支持を集めた馬が「1番人気」です。
当然、強い馬が1番人気になることは多いでしょう。
では単純に、
これは「投資競馬研究所|ウマデシ」として、かなり気になるテーマです。
そこで今回は、2021〜2025年のJRA平地競走について公開されている集計データを使い、1番人気の実力を数字から検証します。
さらに、単に「過去に儲かった条件」を探すだけではありません。
その数字が偶然ではないのか、別期間でも再現する可能性があるのかまで考えていきます。
先に結論を言えば、
まず、1番人気の基本的な強さから確認します。
2021〜2025年のJRA平地競走を対象にした公開集計では、1番人気全体の勝率は約33%です。
つまり、ざっくり言えば、
というイメージです。
一方で、逆から見ると約3回に2回は1番人気が負けます。
そのため、「1番人気=ほぼ勝つ馬」というイメージを持っているなら、少し印象が変わるのではないでしょうか。
ただし、ここで平均だけを見るのも危険です。
同じ1番人気でも、単勝1.2倍の圧倒的人気馬と、単勝4.5倍で押し出された1番人気では、市場からの評価がまったく違います。
そこで次に、1番人気を最終単勝オッズ別に分けて見てみます。
2021〜2025年のJRA平地競走における1番人気を、最終単勝オッズ別に集計した公開データがこちらです。
| 単勝オッズ | 件数 | 勝率 | 複勝率 | 単勝回収率 |
|---|---|---|---|---|
| 1.0〜1.4倍 | 751 | 68.8% | 92.4% | 89.7% |
| 1.5〜1.9倍 | 3,063 | 46.2% | 78.9% | 79.2% |
| 2.0〜2.4倍 | 3,578 | 36.2% | 69.8% | 79.5% |
| 2.5〜2.9倍 | 3,690 | 29.7% | 62.8% | 79.9% |
| 3.0〜3.4倍 | 2,666 | 25.0% | 55.7% | 79.1% |
| 3.5〜3.9倍 | 1,652 | 22.5% | 50.8% | 82.4% |
| 4.0〜4.9倍 | 1,064 | 18.0% | 44.8% | 77.3% |
| 5.0倍以上 | 134 | 9.0% | 35.1% | 47.4% |
出典:競馬データ分析KUMA「1番人気のオッズと勝率の関係」。対象は2021〜2025年のJRA平地競走。障害競走を除く。
まず注目したいのが、単勝1.0〜1.4倍の1番人気です。
勝率は68.8%、複勝率は92.4%。
つまり、オッズだけを見るなら圧倒的な支持を受けている馬は実際にかなり強いことが分かります。
しかし、ここで注目したいのは的中率だけではありません。
単勝回収率を見ると、
です。
したがって、100%には届いていません。
過去5年間のこの集計では、「圧倒的人気だから安全」と考えて機械的に買い続けても、単勝では投資額を回収できていないことになります。
この違いは、「ウマデシ」で何度も取り上げている期待値の考え方につながります。
詳しくは、 的中率80%でも負ける?競馬で勝率より期待値が重要な理由 でも解説しています。
では逆に、オッズの高い1番人気なら割安なのでしょうか。
ここで一つの仮説が浮かびます。
「低オッズが割高なら、高オッズの1番人気を買えばいいのでは?」
ところが、データを見るとそう単純でもありません。
3.5〜3.9倍では単勝回収率82.4%です。
一方で、5倍以上になると、
まで低下しています。
つまり、「1番人気なのに5倍もつく。これはお得なのでは?」という考え方も、この集計ではうまくいっていません。
人気馬だから割安とは限らない。
さらに、高いオッズだから割安とも限りません。
そこで見るべきなのが、
「その確率に対して、そのオッズは高いのか?」
という視点です。
ここで、JRAの払戻の仕組みも確認しておきます。
JRAが公表している通常の設定払戻率は、券種によって異なります。
| 券種 | 設定払戻率 |
|---|---|
| 単勝 | 80.0% |
| 複勝 | 80.0% |
| 馬連・枠連・ワイド | 77.5% |
| 馬単・3連複 | 75.0% |
| 3連単 | 72.5% |
| WIN5 | 70.0% |
単勝の通常の設定払戻率は80%です。
つまり、馬券市場全体として100%がそのまま購入者へ戻る仕組みではありません。
そのため、長期的に100%を上回ろうとするなら、市場平均と同じ判断を繰り返すだけでは難しくなります。
必要になるのは、
市場が実際の勝つ確率より低く評価している馬
を見つけることです。
言い換えれば、「強い馬探し」ではなく「価格の歪み探し」です。
ここからが面白いところです。
2021〜2025年について、JRA全10場・79コースの1番人気を比較した別の公開集計があります。
その中には、単勝回収率が100%を超えたとされるコースが存在します。
公開集計では、函館ダート1000mの1番人気が単勝回収率115.7%とされています。
100円ずつ機械的に購入した場合の過去集計として考えると、かなり目立つ数字です。
ただし、この数字だけを見て「買えば儲かる」と判断するのは早すぎます。
さらに、札幌芝1500mも100.6%とされています。
公開集計上では、79コースのうち100%を超えたのはこの2コースです。
つまり、大半のコースでは1番人気を買い続けても100%に届いていないことになります。
さらに興味深いのが、コースによる差です。
同じ公開集計では、新潟芝1400mの1番人気は、
単勝回収率 48.5%
とされています。
したがって、同じ「1番人気」という分類だけでは、コースごとの違いを説明できません。
ここからは、競馬場や距離などの条件まで分解する意味が見えてきます。
ここで普通の競馬記事なら、
で終わるかもしれません。
しかし、私はここで一度止まります。
なぜなら、
ここはデータ分析で非常に重要なポイントです。
今回の115.7%は、最初から函館ダート1000mだけを検証対象にした結果ではありません。
79コースを比較した結果、その中で特に高い数字が見つかったという順番です。
そのため、
「115.7%だった」という事実
と、
「115.7%に再現性がある」
は分けて考える必要があります。
仮に本当は特別な優位性がなくても、条件をたくさん試せば、偶然成績の良い条件が見つかる可能性があります。
たとえば、競馬ではさまざまな条件を作れます。
さらに、これらを組み合わせれば条件数は一気に増えます。
たとえば、何百通りもの条件を調べたとします。
すると、その中から、
「過去の単勝回収率120%」
という条件が見つかること自体は不思議ではありません。
しかし、その120%が本当に優位性によって生まれたのか、それとも偶然なのかは別問題です。
つまり、私が本当に知りたいのは、
未来でもその数字が残るのか?
ということです。
この問題は、競馬だけの話ではありません。
株やFXのシステムトレードをやったことがある人なら、「カーブフィッティング」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
これは、過去データに合わせて条件を調整しすぎることで、バックテストだけが非常に良くなる状態です。
ところが、実運用を始めた途端に成績が崩れることがあります。
競馬でも同じことが起こり得ます。
この方法だけでは、まだ弱いと私は考えています。
なぜなら、条件を作ったデータと条件を評価するデータが同じだからです。
もちろん、過去データを調べること自体は重要です。
しかし、過去データを何度も見ながら条件を変更すると、そのデータにだけ都合の良いルールが出来上がる可能性があります。
そこで必要になるのが、条件作成に使っていない期間での検証です。
そこで私が重視したいのが、
OOS検証
です。
OOSは「Out of Sample」の略です。
簡単に言えば、条件作りに使わなかったデータで最終確認する方法です。
具体的には、たとえば次のように期間を分けます。
まず2021〜2023年だけを使って、「函館ダ1000mの1番人気が強い」という条件を発見したとします。
そこで条件を固定します。
その後、一度も条件作りに使っていない2024〜2025年へ持っていきます。
そして、それでも回収率100%を超えるのかを確認します。
もし後半でも数字が残れば、少なくとも全期間を見てから条件を作った場合より信頼度は上がります。
ただし、OOSだけを見れば十分というわけでもありません。
回収率115%でも、5年間ずっと強かったとは限らないからです。
たとえば、
※上記は考え方を説明するための架空例であり、函館ダ1000mの実データではありません。
このような結果だったらどうでしょう。
5年間合計では100%を超えていても、実態は2025年の一発に依存しているだけかもしれません。
そのため、私は全期間の回収率だけで判断したくありません。
少なくとも、次の項目は確認したいと思っています。
つまり、「回収率115%」という一つの数字ではなく、その115%がどう作られたのかを見るわけです。
回収率とサンプル数の関係については、 回収率120%でも信用できない?競馬データでサンプル数・収束・再現性を見る方法 でも詳しく解説しています。
ここまでの内容を整理します。
① 1番人気全体の勝率は約33%
② 1.0〜1.4倍なら勝率68.8%まで上がる
③ それでも単勝回収率は89.7%
④ 3.5〜3.9倍では単勝回収率82.4%
⑤ 5倍以上の1番人気は単勝回収率47.4%
⑥ コース別では100%超の集計も存在する
⑦ ただし、それだけでは未来の優位性を証明できない
つまり、「1番人気は強い」という事実と、「1番人気を買えば儲かる」という主張はまったく別です。
さらに、過去に100%を超えた条件が見つかっても、それだけで未来の期待値がプラスとは判断できません。
1番人気だから買う。
私はこの考え方をしません。
一方で、1番人気だから買わないという考え方も違います。
重要なのは人気順ではありません。
見るべきなのは、
です。
これは株式投資で考えると分かりやすくなります。
たとえば、どれだけ良い会社でも株価が高すぎれば、投資対象として割高かもしれません。
逆に、企業そのものに価値があるにもかかわらず、市場から過小評価されていれば割安になる可能性があります。
競馬も考え方は似ています。
強い馬でも、オッズが低すぎれば期待値は下がります。
一方で、市場から実力以上に低く評価されているなら、人気薄でも買う価値が生まれる可能性があります。
つまり、探したいのは「一番強い馬」だけではありません。
実力に対して価格が高い馬を探す。
これが「投資競馬研究所|ウマデシ」の基本姿勢です。
今回、一番気になった数字は、
函館ダ1000m・1番人気
単勝回収率115.7%
です。
しかし、ここまで読んだ人なら、もう「115.7%だから買おう」とはならないはずです。
本当に優位性があるのか。
それとも、過去5年間にたまたま生まれた数字なのか。
そこで次回は、年度別・サンプル数・高配当依存・期間分割という視点から、この「115.7%」をさらに疑ってみます。
さらに、可能であれば前半期間で条件を発見し、後半期間を未知データとして扱うOOS検証まで進めます。
儲かりそうな数字を見つけたときほど、
すぐ信じず、一度壊しにいく。
そして、壊しても残った数字だけを次の検証へ進める。
その積み重ねで、競馬に本当に再現可能な条件があるのかを研究していきます。
本記事で使用した1番人気のオッズ帯別成績は、競馬データ分析KUMAが公開する2021〜2025年JRA平地競走の集計データを参照しています。
また、コース別成績については、ヨミウマが公開する同期間のJRA全10場79コースの集計を参照しています。
なお、払戻率についてはJRA公式情報を基準にしています。