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「単勝回収率120%」。
競馬のデータを見ていて、こんな数字を見つけたらどう感じるだろうか。
「これは儲かる条件かもしれない」
「次からこの条件だけ買えばいい」
そう考えたくなる。
しかし、その回収率120%が わずか5レースから計算された数字だったら、話はまったく変わってくる。
これは競馬だけの話ではない。
株式投資でもFXでも、バックテストでも同じだ。
この記事では、競馬の回収率を見るときに「なぜサンプル数が重要なのか」、そして過去の好成績をどこまで信用していいのかを考えていく。
まず、極端な例を考えてみよう。
ある条件に該当した馬を毎回1,000円ずつ買ったとする。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 対象レース | 5レース |
| 購入総額 | 5,000円 |
| 払戻総額 | 6,000円 |
| 回収率 | 120% |
数字だけ見ればプラスだ。
だが、ここで1レース結果が変わっただけでどうなるだろう。
5件しかなければ、たった1回の的中や不的中が全体の数字を大きく動かす。
つまり、 回収率120%という数字そのものより、その120%が何件のデータから作られたのかを見る必要がある。
次の2つを比べてみる。
| 条件A | 条件B | |
|---|---|---|
| サンプル数 | 5 | 500 |
| 回収率 | 120% | 120% |
表示される回収率は同じ120%。
しかし、情報としての重みは同じではない。
5回しか試していない条件は、偶然の大当たりだけでも簡単に数字が跳ねる。
500回繰り返してなお同程度の結果が残っているなら、少なくとも「偶然だけでは説明しにくいのではないか」と検討する材料は増える。
理由は単純で、競馬には偶然の影響が大きく含まれているからだ。
能力のある馬が必ず勝つわけではない。
出遅れ、不利、展開、馬場、位置取り、ペースなどによって結果は変わる。
さらに馬券の回収率にはオッズが絡む。
たった1頭の高配当馬が的中しただけで、少数サンプルの回収率は一気に跳ね上がることがある。
仮に10レースで合計10,000円買い、1回だけ15,000円の払戻があれば、それだけで回収率は150%になる。
だから確認したいのは、
といった中身だ。
では、何件あれば信用できるのか。
ここで「100件あれば大丈夫」「500件なら収束する」と固定してしまうのも危険だ。
必要なサンプル数は、狙っている現象によって変わる。
たとえば勝率50%前後の条件と、勝率5%しかない大穴狙いでは、結果のブレ方が違う。
大穴中心なら的中そのものが少ないため、かなり長い期間を観察しなければ本来の性質が見えにくい。
100件で回収率140%。
200件で125%。
500件で108%。
1,000件で81%。
こうなっているなら、最初の140%を根拠にするのは危ない。
反対に、サンプルを増やしても一定の範囲に数字が残るなら、より詳しく調べる価値が出てくる。
FXで自動売買やトレードロジックを検証したことがある人なら、バックテストという言葉を知っていると思う。
過去のデータに売買ルールを適用し、「このルールを過去に使っていたらどうなったか」を調べる方法だ。
競馬も本質的には同じことができる。
たとえば、
と条件を細かくしていけば、回収率の高い組み合わせを探すことができる。
しかし、ここに大きな罠がある。
条件を探し続ければ、偶然「過去だけ勝っていた条件」を見つけることもできる。
競馬場、距離、枠順、人気、オッズ、馬場、騎手、血統、頭数。
これらを大量に組み合わせて探せば、どこかに回収率150%や200%の条件が見つかる可能性は高くなる。
問題は、その数字が本物の傾向なのか、偶然見つかっただけなのかだ。
これは投資の世界でいう過剰最適化(オーバーフィッティング)の問題に近い。
過去データに完璧に合わせた条件ほど、未来では通用しないことがある。
だからウマデシでは、 「過去の回収率が高かった」だけでは買い条件とは考えない。
そこで重要になるのが、データを分けて検証する考え方だ。
仮に2021年から2025年までのデータがあるとする。
最初から5年間全部を使って条件を探すのではなく、
というように分ける。
重要なのは、後半の結果を見てから条件を変更しないこと。
前半で、
「○○競馬場・○○m・単勝○倍・○番人気なら成績が良い」
という条件を見つけたら、その条件を固定する。
そして条件探しに使っていない後半データでも同じ傾向が残るか確認する。
FXの検証では、こうした未使用データによる確認をOOS(Out of Sample)と呼ぶことがある。
これはかなり重要なポイントだ。
たとえば2つの競馬条件があったとする。
| 条件A | 条件B | |
|---|---|---|
| 全期間回収率 | 150% | 115% |
| 前半期間 | 180% | 120% |
| 後半未使用期間 | 72% | 108% |
※数字は説明のための仮例。
全期間だけなら条件Aの方が圧倒的に魅力的に見える。
ところが、条件を作るときに使っていない期間では崩れている。
条件Bは派手ではないが、後半にも傾向が残っている。
未来で使うことを考えるなら、こういう違いを無視できない。
全期間の回収率だけを見ると、途中の変化が隠れる。
たとえば5年間の回収率が110%でも、
※これも説明用の仮例。
という推移なら、全期間110%だけを見て「現在も儲かる条件」と判断するのは危険だ。
市場の評価が変わった可能性もあるし、最初の数年間が偶然良かった可能性もある。
反対に毎年まったく同じ成績になる必要もない。
競馬は確率の世界なので、年単位でもブレる。
見るべきなのは利益が特定期間だけに極端に依存していないかだ。
もうひとつ、回収率とセットで見たい数字がある。
ドローダウンだ。
これは資金がピークからどれだけ減ったかを見る考え方で、株やFXではおなじみだ。
競馬でも非常に重要になる。
最終的な回収率が120%だったとしても、その途中で資金が大きく減っていたらどうだろう。
理論上はプラスでも、現実には途中で耐えられなくなるかもしれない。
これはNISAやS&P500でも同じ。
最終リターンだけではなく、途中の下落幅を知っているかどうかで、実際にその投資を続けられるかは変わる。
競馬の戦略を実際に運用するなら、さらに最大連敗も重要になる。
たとえば回収率115%でも勝率10%なら、かなり長い連敗が発生する可能性がある。
10連敗したところで、
「この方法はもう使えない」
と止めてしまえば、バックテスト上の回収率を再現することはできない。
だから、
まで見たい。
「儲かったか」ではなく「現実に続けられる戦略だったか」まで確認する。
ネットでは「回収率の高い騎手」「回収率の高いコース」「儲かる血統」といったランキングをよく見かける。
もちろん、ランキング自体が悪いわけではない。
むしろ仮説を見つける入口としては非常に面白い。
ただし、数字を見つけたら次の順番で確認したい。
ここまで見て初めて、
「もう少し詳しく研究する価値がある条件」
になる。
競馬データを研究していると、回収率100%を超える条件を見つけた瞬間が一番楽しい。
だが、本当に重要なのはそこからだ。
なぜその条件だけ市場平均を上回ったのか。
偶然ではないのか。
条件を少し変えても残るのか。
別の期間でも残るのか。
そして今後も存在し得る理由があるのか。
ここまで考えないと、 「過去に儲かった条件」を「これから儲かる条件」と取り違えることになる。
競馬データで回収率120%という数字を見つけても、すぐに飛びつく必要はない。
最初に見るのは、
だ。
5件の120%と、500件の120%は同じではない。
さらに500件で120%だったとしても、条件を探すために使ったデータだけで良かったのなら、まだ十分ではない。
競馬で探したいのは「過去に一番儲かった条件」ではなく、「未知のデータでも傾向が残る条件」だ。
この考え方は、株式投資でもFXでもバックテストでも変わらない。
人気ではなく価格を見る。
的中率だけでなく期待値を見る。
回収率だけでなく再現性を見る。
それが、ウマデシで競馬データを見るときの基本姿勢だ。
期待値そのものについては、 「的中率80%でも負ける?競馬で勝率より期待値が重要な理由」 でも詳しく解説している。
また、ランキングを見る際の注意点は、 「競馬の勝率ランキングはどこまで信用できる?」 も合わせて読んでほしい。